他人の病床を奪うべからず

37歳子無し主婦です。

 

30歳の時に子宮頸癌検診で子宮筋腫が発見されて、6年。女性ホルモンパワーで筋腫が7cmまで育ったので、お医者さんの勧めもあって2019年の12月に筋腫摘出手術を決意しました。

 

手術予定日である2020年5月下旬に向けて、着々と準備を進めていたにも関わらず、手術1ヶ月前になって「コロナのため無期限の手術延期」となってしまいました。

 

子宮筋腫摘出手術を受けたあとは、不妊治療をすることも検討していただけに、どん底に突き落とされた気分でした。

 

「もう子どもは諦めて、再就職を目指すべきか」「月1回1週間は続く体調不良とこれからも付き合い続けるしかないのか」

手術の連絡を待つ間、ずっと悩み続けていました。

 

しかし、コロナの新規感染者数が少し減ってきた時期(今思えば、第一波の収束時期)に「当初の予定より1ヶ月遅れて手術をする事ができるようになりました」と病院から連絡が来て、無事に2020年6月に筋腫摘出の手術を行うことができました。

 

当初は、コロナ禍という特殊な環境における子宮筋腫摘出手術を記録して、同じ境遇で悩んでいる人の参考になれば…と思っていたのですが、丁度入院中に「第二波」がきてしまい、私が住んでいる街でもクラスターが発生してニュースになったりしてしまいました。

 

この状況で、「自分にとっては緊急性の高い手術、でも一般的には緊急性の低い手術」でもあった、子宮筋腫摘出手術の備忘録を公開するのはどうなんだろう…と思い、記録はしたものの公開するのはやめてしまいました。

 

そして、手術から5ヶ月経った2020年11月、再びコロナ新規感染者数が増え、「第三波」がやってきてしまいました。

 

実は、私も9月の第二波が少し収まっていた時期に、11月の3連休とGO TO トラベルを使った旅行の予定を立てていました。なんとなく、「第三波は絶対来る。でも、来るとしたらインフルエンザが大流行する時期だろう。そう考えたら、11月の三連休がGO TOを使った旅行をする最後のチャンスかもしれない」と考えていました。

 

しかし、残念ながら直前になって日本医師会の中川会長による「11月の三連休は我慢の三連休にしてほしい」という発言がありました。

 

その日の夜、夫と相談して、「旅行をしても、自分たちはコロナに感染しないかもしれない。でも、うしろめたい気持ちを抱えながらの旅行になることは間違い無いし、そんな旅行じゃ楽しめない」という結論に至り、泣く泣くキャンセル料を払って旅行を諦めました。

 

それから2週間。私の感情はテレビやネットニュースに振り回されていました。

 

中でも、私の心が一番ザワザワしたのは、神奈川県が県内の医療機関に対して、緊急性が低い手術を延期するなどして、コロナの重症患者のための集中治療室や病床の数を確保をせよと要請したというニュースです。

 

神奈川県が言ってること、もちろん理解できます。全然間違ってません。間違っていませんけど、コロナ禍に緊急性の低い手術をした身として言わせて貰うと…

 

「簡単に言ってくれてんじゃねえよ!」です。

 

手術の内容にもよるとは思いますが、緊急性の低い手術にだって、「手術をするための準備期間=投薬期間」があります。

 

手術を受けるために打った注射や飲んだ薬の副作用で、すでにヘトヘトになっているところに、手術が延期…ともなれば、それまでの投薬は無駄になってしまいます。後日、改めて手術日が決まったとしても、今度はその日に向かって再び準備(投薬)をしなければなりません。本来なら一度で済むはずだった準備期間の薬代・診察代を、手術延期を余儀なくされた患者は二重に負担しなければなりません。神奈川県は、無駄になった薬代・診察代を、患者に対して補償するつもりで病院に要請しているのでしょうか。

 

「手術延期で無駄になった準備期間の薬代・診察代を神奈川県は補償しません。病院も補償しません。患者さんの負担です。」なんて、酷な言葉を医療従事者に言わせたりなんてしてませんよね?ねえ、神奈川県さんよぉ。

 

ただ、4月に、予定していた5月の手術の延期を言い渡された私の場合(第一波)、延期理由は新型コロナウィルス感染拡大のため…というところまでは同じなんですが、正確には「新型コロナウィルス感染拡大により、マスクやガーゼなどの手術で必要な医療資材の流通が滞っているため」だったので、自治体の要請ではなく、病院側の判断という印象でした。(この件は、また改めて詳細を書きます)

 

しかし、神奈川県の場合は自治体側の緊急要請で、その目的が集中治療室や病床の確保という事なので、第三波は第一波よりも深刻な医療体制であることが、窺い知れます。

 

だからこそ、中川会長の「我慢の三連休」発言以降、「医療従事者に感謝してますよ!」アピールを高らかに謳いながら、責任の所在をなすりつけ合うようにも、ただただマウンティングをしあっていたようにも見える、グダグダで曖昧でいい加減なやりとりを長く続けていた国と某自治体の政治家を見ては怒り😡を覚えましたし、高齢者の旅行の自粛(なのか、停止なのか)が求められたのに、「感染対策に気をつけながら旅行を楽しみたいと思います」「年寄りばっかりいじめるな!」とぬかす高齢者のインタビューを見ては、ちょっと…いや大分イライラしたり😑していました。

 

あ、でも、楽しみにしていた娘さんとの旅行を目前に控えていた80歳代の女性が涙目になりながら悔しい気持ちを訴えている姿を見て、「わかる。わかるよ、私にはあなたの気持ち😔」と勝手に共感したりもしていました。

 

経済を回すことも重要だと思います。去年よりも自殺者が多い事も、ただでさえ、日本は新卒至上主義なのに、その新卒採用を控える大手企業が次々出ている事は見過ごせません。(自分が氷河期世代なので余計に!)

 

だからこそ、「少しでも経済を回したい!」と、旅行の計画を立てていたわけですし。

 

でも、「医療崩壊させないこと」と「経済を回すこと」のどちらがより優先度が高いかと言ったら、私は「医療崩壊させないこと」の方が上だと思います。「自殺未遂」という言葉もあるぐらいですから、実際に報道された自殺による死亡者数よりも多い数の人たちが、自殺を図っているはずで、死亡者数に数えられなかった、未遂で済んだ人がいるというのには、医療従事者による力も大きいはずです。「そもそも、自殺者が増えるような経済状況をなんとかすべきだ!」という声もありそうですが、自殺の理由や人の悩みって「経済」が全てではないですよね。

 

私達の日常生活には通勤・通学といった移動が欠かせないからこそ、旅行(という名の大移動)のどこに問題があるのかと言われると難しいのですが、コロナ以前から、私達は、免疫力の低下やインフルエンザなどのウイルス感染に気をつける生活を、特に冬は行ってきたはずです。

 

旅行という非日常を決行し、局地的に人が多く集まる観光地で、通勤・通学以上に負担がかかる移動による疲れ、冬の寒さと乾燥による免疫力の低下…もうこれだけで、コロナにかからずとも、体調不良になるリスクが十分できあがりです。

 

例年だったら、病院に行かず「そのうち治るでしょ」と自然治癒に任せていた風邪も、今年は「あ、もしかしたらあの時(仕事、会食、旅行etc)…」となり、念のため病院へ行こう…となりますよね。

 

もちろん、具合が悪いのなら、当然病院へ行くべきです。でも、今はこの状況だからこそ、コロナに感染する・しない以前に、そもそも病院へ行かなければならない体調にならないよう、全力で注意を払うべきです。

 

報道では、多くの医療従事者が自分たちの置かれた状況を必死で訴えています。私は、彼らが訴えている事を聞いても、それを想像することしかできないので、彼らの状況を100%完全には理解することはできません。

 

でも、自分自身が手術延期という状況に直面したことによって受けた影響が、回り回って医療従事者の現在の状況にも繋がっているのではないかと、手術から半年近くが経った今、思っています。

 

私にとっては1ヶ月の延期で済んだ手術だったけれども、病院にとってはその1ヶ月の間にできるはずだった手術ができない、つまりその分の収入が減る、結果、医療従事者のボーナス減に繋がるってことですし、

 

手術の受け入れを再開することができても、今度は手術を延期した患者さん全員の手術スケジュールのリスケ・手術準備再開にあたって見直される治療方針、新たに必要になった薬や注射の準備、患者さんへの説明連絡…私が想像できる範囲だけでも大量の仕事が増えています。

 

ちなみに、私は二度手間になった手術準備にかかった診察代・薬代は全部払いましたけど、延期していた手術日の決定と一緒に、電話で受けた手術準備再開にあたっての今後の治療方針の説明に関しては、一銭も払ってないですよ。私の記憶が確かならば、それは請求されていませんでした。つまり、担当医師がイレギュラーな業務をタダ働きしていたという話…。

 

長くなってしまいましたが、なぜ一度はやめたブログの公開を、このタイミングで公開しようと思ったかというと、理由は2つ。

 

①単純にやっぱり子宮筋腫摘出手術の備忘録として公開しようと思った

 

②コロナ感染者と比べて、あまりスポットを当てられることがなく、その実態が見えづらい「緊急性の低い手術を受けた(受けようとしている)患者」が、ここにいますよー🤗とアピールしたい

 

 

とはいえ、あくまでも入院中に書いた備忘録を書き直しはせず、そのまま公開することにしたので、現在のコロナの状況と照らし合わせてどうこうとか、そこまで深い考察は書いてません。

 

コロナ禍という非日常、人生初の手術を迎えるという非日常のダブルパンチな日々を、ただつらつらと書いてるだけです。

 

第三波のさなか、今、振り返ってみてどうこう、というのはまた、備忘録とは別に書くかもしれませんし、書かないかもしれません。

 

私が今一番訴えたいこととしては、例え「緊急性の低い手術」であったとしても、「手術を延期する」っていうのは、口で言うほど簡単に出来ることではないんだよ、ということです。

 

あと、「かかりたくてコロナにかかったわけじゃない」というのはよくわかります。本当、その通りで、かかりたくてコロナにかかる人なんて一人もいません。でも、自覚のない行動が自分や家族の健康に影響を与えるだけでなく、誰かが使うはずだった病床を奪う事にも繋がります。

 

そう言ってもね、私だっていつコロナにかかるかわかりません。でも、かかった時に「あんなことしなければよかった」とか考えることがないようにしたいな、と思っています。

 

どうせ、かかるなら「チクショー!あれだけ気をつけたのに!!」の方が、自己嫌悪にならずに済むんじゃないかと…。

 

とりあえず、この場では「他人の病床を奪うべからず」。これだけでも覚えていただければと思います。

 

では。